軽い適度な運動が高血圧症を改善する事は、古くから言われていますが、その一つのメカニズムを解明し説明した資料がありましたので、引用します。
引用部は斜体としていますが、レイアウト等の都合で、若干語句を編集してあります。
○ ラットでの実験
- 高血圧を自然発症するラット(高血圧ラット)において、ヒトの軽いジョギング程度に相当する運動(分速20メートルの走行)を続けると、高血圧改善効果、交感神経活性抑制効果があることが報告されていた。また、その分速20メートルで走行中のラットでは、前足が着地する毎に頭部に約1 Gの衝撃が加わることを本研究グループは明らかにしていた。
- 今回、麻酔した高血圧ラットの頭部に1 Gの衝撃がリズミカルに加わるように、毎秒2回頭部を上下動させると、脳内の組織液が流れ、細胞に力学的刺激が加わり、これを1日30分間・2~3週間以上続けると、高血圧改善(血圧低下)効果があることが分かった。
- 高血圧ラットにおける高血圧の病態に関与することが知られている延髄の一部のアストロサイトにおけるアンジオテンシン受容体の発現が、1日30分間・4週間の運動でも、1日30分間・4週間の受動的頭部上下動でも、低下することが分かった。
- 延髄における間質液の動きを阻害すると、運動や受動的頭部上下動による高血圧改善効果も、アストロサイトにおけるアンジオテンシン受容体発現低下も、交感神経活性抑制効果も認められなくなった。
- 間質液:
組織・臓器の実質以外の部分は間質、間質に存在する体液(組織液)は間質液と呼ばれる。 - アストロサイト:
グリア細胞の1種であり、その形状から星状細胞:アストロサイトと名付けられた。近年、アストロサイトの機能障害が脳機能関連疾患の病態に深く関与することが明らかにされつつある。 - アンジオテンシン受容体:
ここではアンジオテンシンII 1型受容体を指す。アンジオテンシンI~IVのうち、アンジオテンシンIIが最も強い血圧上昇作用を有する。
○ 人での検証
- ヒトにおける適度な運動の典型である、軽いジョギングあるいは速歩きでも、足の着地時に頭部に1 Gの衝撃が上下方向に加わることが分かった。
- 座面が上下動することで、1 Gの上下方向の衝撃がヒトの頭部に加わるように設計された椅子に1日30分間・1週間に3日・1ヶ月間(4.5週間)搭乗すると、高血圧改善効果、交感神経活性抑制効果が認められた。
- 1週間に3日・1ヶ月間の上下動椅子搭乗期間の終了後も、約1ヶ月間は高血圧改善効果が持続した。
この研究での成果として、最期に言及されている次のことは、我々の健康のための身体活動や生活にも応用できそうに感じられる。
健康維持・促進法としての運動の正体(本質)の少なくとも一部が、身体への物理的衝撃及びそれにより生じる間質液流動促進であるとする仮説(の一部)を検証した。
本研究では、水泳・水中歩行・自転車(エアロバイクを含む)漕ぎなど、身体への物理的衝撃があまり想定されてこなかった運動でも、頭部に0.5 G程度の加速度が生じることを確認した。また、ラットを用いた実験で、0.5 Gの頭部への衝撃でも1 Gの衝撃とほぼ同程度の高血圧改善効果を認めた。
☞ 転載・引用
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📖 原情報・出典
“適度な運動”が高血圧を改善するメカニズムをラットとヒトで解明
~頭の上下動による脳への物理的衝撃が好影響~
https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_38778/
国立循環器病研究センター研究所
国立障害者リハビリテーションセンター病院
👀
かかとを使ったその場足踏み、では効果は無いのだろうか?
肩から首に掛けての筋弛緩法で頭部を刺激するのはどうだろうか?
いろいろと知りたいことがありそうです。
原情報資料の最後にも書かれているように「運動したくても運動できない者(例えば、寝たきりの高齢者や肢体不自由障害者)にも適用可能な擬似運動治療法の開発」に繋がって欲しい。
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