キャロルのマジック

草木の枝分かれの数、花びらの枚数、ひまわりやたんぽぽの種の配列数、などの植物を始め、身の回りのいろいろな「数」を規定する部分で大切な要素となっている[フィボナッチ数列]。

アップルや現在のツイッターのロゴマークの収まりが良いのも、マークの曲線を分解してみると、直径がフィボナッチ数列の円で構成されているからだといいます。

このフィボナッチ数列は、F0=0, F1=1, Fn+2=Fn+Fn+1で表され、具体的には、[0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233・・・・]と続く数列です。最初の二項は0、1、以後は、どの項もその前の2つの項の和となります。面倒な話はさておいて、ここでは、そういった数列があることだけをご承知ください。今回は、そのフィボナッチ数列を使ったパズルを、味村ノートから再掲です。

  1. 一辺がフィボナッチ数列のある値、例えば[8]の正方形を、その値の直前の2つのフィボナッチ数列の値、[5]と[3]とにより、右の図のように4つの部分に分ける。
  2. 次に、これらを切り離して、下の図のよう長辺[13]、短辺[5]の長方形に並べ替える。
  3. 元の正方形の面積は 8×8=64 だが、並べ替えた長方形の面積は 13×5=65 で、[1]増えている。

さて、 [1]はどうして増えたのか?

増えた[1]の正体

切り離し置き替えたことで面積が[1]増えた 8×8 の正方形の場合について見てみましょう。
前述の通り、8×8 の正方形の中に作成された図形A,B,C,Dを切り離し置き替え、13×5 の長方形が作成されますが、よく見ると、図形A,B,C,Dに囲まれた細長い隙間(赤色部)があることが分かります。このままでは隙間が確認しにくいので、隙間部分をデフォルメしたものが下図下段です。隙間部分PQSRの面積を算出してみましょう。

tanα=3/8=0.375でα=20°36′。
また、tanβ=2/5=0.4でβ=21°48′。
α<βだから、P、Q、R、Sは一直線上になく、極端に描くと左図下段のように、隙間(PQRSは極端に細い平行四辺形)ができる。
三角形Bで、h:3=5:8だから、h=15/8=1.875。
本来、hは[2]なければならないから 2-l.875=0.125 足りない。
つまり、ここでの隙間の巾は[0.125]。1マスを1cmとすると1mm余りだから、図で確認することはなかなか難しい。
△PSTの面積は 5×13÷2=32.5。
三角形Aと四角形Cとの面積は、それぞれ 3×8÷2=12 と (3+5)×5÷2=20 とで、両方合わせて 12+20=32。だから、隙間の下半分は 32.5-32=0.5 になる。同様に、上半分も[0.5]になり、隙間全体では 0.5×2=1 となる。これが増えた[1]の正体(PQSR四辺形)となる

[1] 減るケースもある

上例を [8]→[13]、[5]→[8]、[3]→[5]とフィボナッチ数列の値を1つずつ大きい値に置き換えると、元の正方形の面積は 13×13=169 だが、並べ替えた長方形の面積は 21×8=168 となって、こんどは[1]減る。
13×13の正方形のケースでは、
隙間ではなく重なりができ、この部分が消えた[1]の正体となる。説明図は下図下段。

📖 本稿は次の文献を参考にしました。
数,数,・・・:不思議なふるまい (Numbers at Work and at Play)
  M.ラインズ著:片山孝次訳、岩波書店1989


👀 
ルイス・キャロル(Lewis Carroll:1832~98)は、
「不思議の国のアリス」(1865)の作家として知られています。本名はチャールズ・ラトウィッジ・ダッジソン(Charles Lutwidge Dodgson)で、オックフォード大クライスト・チャーチ・カレッジの数学講師で、論理学者、写真家、詩人でもあった多才な人です。

この「キャロル(L.Carroll)のマジック」は「黄金分割と数列の話」、フィボナッチ数列と黄金分割について書かれた味村ノートの一文からの抜粋編集をしたものです。従って文責はPi-3 talksにあります。


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